Takalog

東南アジア・アフリカ・中東・中南米・・・世界一周の記録

「ニート」が幸せ?に暮らせる国キューバ

キューバカストロ議長の退任

キューバ社会主義を先導してきた、ラウル・カストロ議長が退任するというニュースを見て一抹の寂しさを覚えた。キューバには2016年5月に世界一周旅行の最後に訪れたのだが、50年も前のクラシックカーが町中をビュンビュン走るあのレトロな感じがなくなってしまうのだろうか。

 

みんなが幸せ?になる社会主義

社会主義国家をざっくり表現すると、国民が等しく平等な国家ということになる。

利潤追求を肯定する=貧富の差を肯定する、資本主義とは対極にある。

「みんなが平等」

そうなればまるで理想郷のように聞こえるが、現実はそううまくはいかない。

まず最初の壁は「税収」だ。社会主義国家では、働き者は多くの税金を徴収され、逆に働かない者にも等しく配分される。

稼いでいる人間からすれば不平等だと感じて労働意欲が低下し、「働くのが馬鹿らしい」と考える人間が増えてくるのも当然の話だ。税収が下がれば国民全体を幸せにするための原資がなくなり、社会主義は根幹から成り立たなくなっていく。

そして次の壁は集めた税金を等しく「配分」する際に立ちはだかる。国民に等しく富を配分する役割を担うのは役人が、税金を懐に入れて私腹を肥やしてしまうのだ。

結局、「集める」「配る」両面から社会主義は成り立たなくなり成功した例はほとんどない。中国やベトナム社会主義を標榜してはいるものの、実際のところは日本もびっくりの資本主義経済を形成している。 

 

社会主義が絶妙なバランスで成り立つ国、キューバ

そんな単なる理想論となりつつあった社会主義を唯一成功させたキューバ。成功した要因は「適度な規模」、そして「カストロ議長」の存在だった。

人口わずか1000万人程度という集めた税金を配りきれる規模。そして私腹を肥やすことなく自らも質素な生活を送り、国民に富を配分するカストロ議長という理想的な指導者の存在。奇跡的に揃ったこの2つの要素が、キューバ社会主義を絶妙なバランスで成り立たせているのだ。

 

ぼったくり・悪い奴がほとんどいない!

では実際、キューバで暮らす人は本当に幸せなのか?

私が2016年に行って感じた限りでは、その答えは「YES」とも言えるし「NO」とも言える。東南アジアや中南米などの発展途上国を旅していると、タクシーやレストラン、土産物屋などで相場よりも遥かに高額な価格を提示される「ボッタくり」に直面することも多い。

ところがキューバではそのようなことはほとんどなく、店の商品や交通機関は適正価格。道行く人もとにかく親切な人が多かった。これがインドだったら物の値段なんてあってないようなものだし、頼んでもいないのに勝手に(断っても)道案内や観光案内をした挙句金を請求する輩が横行しているところだ。

 

治安もいい。夜に首都・ハバナの町を歩いても誰かが襲ってきそうな気配は一切ないし、他の旅人からの情報でも、強盗などの危険な目に遭ったという話は聞いたことがない。

それは国民の98%が「公務員」という立場であり、たとえ実態が「ニート」であっても国から給料が支払われるキューバでは、ボッタくりや強盗におよばなくても最低限の暮らしが成り立つからではないかと思う。あるレストランでは、100円のコーラを100円で出していたことすらあったほど。商売気なさすぎでは。

 

街では多くの大人が(おそらく)働きもせず昼間からラム酒を飲み、歌や踊りに興じている。まさに「働いたら負け」の主張を持つ人間にとっては理想郷だろう。 

稼ぐ人には厳しい国

逆に、働き者にとって不平等なのが社会主義というもの。給料のほとんどが税金として持っていかれることを不満に思う人間は当然いるはず。事実、ソフトバンクホークスに所属するキューバ人選手、アルフレド・デスパイネ選手は推定年俸4億円の内、8000万円程度しか手元には残らずに残りはキューバ政府へと渡っているそうだ。

当然、不満を持つ選手は少なくなかった。ユリエスキ・グリエル(現MLBアストロズ、元ベイスターズ)を始めとするキューバの有力選手たちは相次いで亡命し、10億円以上の高額な年俸を手にしている。

上記は極端な例だとしても、一般市民の中にはもっと働いて豊かになりたいという思いを持つ者が現れたとしてもなんら不思議ではない。インターネットが発達した現代では思想統制にも限界がある。

徐々に変革の足音が

アメリカと国交を断絶してからは、両国間の直通便はストップしたままだったのだが、私が訪れた2016年にはついにマイアミ・ハバナ間の直通便が復活していた。アメリカの大統領がトランプ氏になって両国の関係は若干後退したものの、国交回復はそう遠くない未来なのではないかと言われている。

資本主義が蔓延することで大らかなキューバらしい風土がなくなり、「アメリカの51番目の州」のようになってしまう日が来てしまうのか。今後の動向に引き続き注目していきたい。